ひとりぼっちのリーサ
先日、東洋占星術のセッションを受けました。
以前、私がやっていたセミナーに参加された方で、先月、地方から東京に引っ越しされてきた方がいました。その方は、地元で東洋占星術のセッションをやっておられたそうです。しかし地方ゆえ人口が少なく、それだけで生計をたてるのは難しいものがあったとのことで、今回、東京に出てきて東洋占星術をメインの仕事にしたいと考えておられるそうです。
それで、私のことを観て頂けるという話になったのです。
私は今、西洋占星学(サアラさんは、あえて西洋占星「術」とは言わずに、西洋占星「学」と言っています)の学校に行っているので、西洋ではなく東洋の占星術があることは知っていました。しかし、当然ながら東洋占星術で診てもらうのは初めてでした。
その中で指摘されたことの一つは、私は、人と人を繋ぐものを胸に持っているということです。私は西洋占星学を学んでいるので、このことは自分のホロスコープを読んで知っていました。
一例を挙げたいと思います。
私は20代後半から30代前半の頃、テニスに夢中でした。
その頃、仕事関係のテニスサークルがあり、私は幹事をしていました。週末にコート一面を借り、集まっても10数人程度の小さなサークルでした。
ところが私が幹事をしていた5〜6年の間に、サークル内で知り合って結婚したカップルが5組も出たのです。たしかに、お年頃の男女が集まっていたとはいえ、このコストパフォーマンスは我ながら凄いと思います。私は自分のホロスコープを見ながら、こうした人と人を繋ぐ星があることを発見して感慨深いものがありました。
ですから、人と人を繋ぐという点に関しては、特に目新しいものではありませんでした。
興味深かったのは、私は孤高の人だと言われたことです。
人と人を繋ぐ星を持っていながら、孤独が平気というのは一見相反するように見えます。しかし、それは一人の人間の中に共存しうるものだと思います。
私は、一人でも平気な上に、大勢の中に長くいると一人になりたがる傾向があると指摘されました。
これは、私がまだ自分のホロスコープでも発見していないことでした。そして、それは見事に私の性格を捉えていると思います。
私が学生時代の頃ですから、もうだいぶ前ですが、私は友人のT君と人類が滅亡して自分一人になったらどうするかという話をしたことがあります。
私は、何の躊躇もなく、たとえ地球上で自分一人だけになっても、一人で生きていくと答えました。
するとT君が、「一人になって生きて、何の意味があるんだ!」と強い口調で反論してきたのです。私はT君の考え方に、カルチャーショックのような衝撃を覚えた記憶があります。私とは180度、真逆の感性です。T君は、人との関係性の中に、生きがいのようなものを見い出す生き方しか考えられなかったのかもしれません(いや、むしろT君の方が一般的で、私のような考え方は、日本人の中ではごく少数という気もします)。
こうしたことを考えるとき、私は故手塚治虫の「火の鳥」という漫画の1シーンを思い出してしまいます。それは森の中で猿田彦が歩いているシーンです。一人で歩いているのですが、猿田彦にたくさんの野生の鳥や小動物がぞろぞろと付いてくるのです。猿田彦は人との繋がりはないが、たくさんの動物とコミュニケーションが取れています。私には、そうした生活も楽しそうに見えるのです。
孤独ということを考えているうちに、取りとめのない話になってしまいました。
これまでアーディ・S・クラーク女史のET、UFOの話を何回か紹介してきましたが、今回は孤独に関する話です。
題名は「ひとりぼっちのリーサ」ですが、もし私がリーサの立場だったら、「私は孤独が平気です」などと言えるのだろうかと自問自答してしまいます。
では、『「Youは」宇宙人に遭っています』(アーディ・S・クラーク著、明窓出版)から抜粋して紹介します。
・・・<『「Youは」宇宙人に遭っています』、p252〜261pから抜粋開始>・・・
ひとりぼっちのリーサ
年に一度アラバマ州の伯父を訪ねていたあるとき、彼に頼まれてモンタナ州へ帰る途中でアーカンソー州のオザーク山脈に立ち寄って、彼の友人に荷物を届けたことがありました。その友人とは伯父が軍隊にいたときからの知り合いで、リーサという名の女性でした。彼女も伯父と同じ空軍士官で、軍隊生活も含めて彼らの友情は30年以上にもわたって続いていました。伯父は彼女のことを、”忠実な友人”と言っていました。
「彼女は私がこれまで出会った中で最も強い女性なんだ。精神、肉体、情緒のすべてにおいてね。並外れて聡明な女性であることは言うまでもないよ」
リーサの家に着くと、そこは巨大な湖のほとりに不規則に伸びたログハウスで、夕方6時ごろになるとオザーク山脈の影に四方からすっぽり包み込まれてしまうところでした。車を停めると彼女が庭先で私を待っていました。私はそこで荷物をおろした後は、近場の宿をみつけて一泊していくつもりでいましたが、彼女は耳を貸そうとはしませんでした。
「私はゲストルームの用意を整えて、あなたに泊まっていってほしいと思っていたんです。ここにはあまり仲間がいないので、さみしいんです」そう打ち明けてきました。
夕食を済ませたあと、リーサは2本のワインボトルと2個のグラスを持ってきて、仕切りのある正面のテラスで湖を見下ろしながらくつろぎましょうと提案してきました。揺り椅子に腰かけた私に彼女はワインを注いでくれて、隣の椅子に座りました。
「ここは本当にこの世の楽園の一角っていう感じですね。いったいどうやってこんな素敵なところを見つけたんですか?」湖を眺めながら私は尋ねました。
「たぶん私は運が良かったか、または悪かったんでしょうね。それは受けとめ方しだいです」彼女は笑って言いました。
「持ち主がここを売りたがっていたんです。地元で私の大学時代の友人が不動産会社をやっていました。私は空軍を退役した後で暮らす場所を探していて、価格的にちょうど良かったのでここを買ったんです」
「あなたは良い選択をしたと思いますよ」
「そう思うときもあれば、思わないときもあります。ここにいると淋しくなるんです。古い友人たちが恋しくなります。あなたの伯父さんにも会いたくなります。彼は私の親友でしたから」
私は彼女の言葉にじっと耳を傾けていました。その声には哀しみがにじみ出ていました。それは昔からの友だちを懐かしむ郷愁の念よりも深いものでした。そのときふと私は、彼女は私がこれまで出会ってきた中で最も孤独な人だと感じました。彼女のことをさらに知っていくにつれて、私の感覚は正しかったことが分かりました。
しばしの沈黙をやぶって彼女が口を開きました。
「あなたの伯父さんによると、あなたはスターピープルについて調べているんですってね」
「ええ、しばらく前から、いろいろな遭遇体験者の話をテープに録ったり記録したりしています。当初は二、三の体験談が聞けるくらいかなと思っていたんですが、これほど多くの人たちがスターピープルに遭遇していたことに本当に驚いているんです」
「伯父さんは私たちが一緒に配属されていたグリーンランドで目撃したUFOについて何か話していましたか?」
「いいえ、かつて私がUFOについて伯父に尋ねた際には、公式声明のような言葉しか返ってきせんでしたので、そこでやめにしていました」
「そうですか。私は空軍がどんな公的立場にあろうと気にしません。UFOは存在するんです」リーサはそう言って語りはじめました。
「彼らの高度なテクノロジーに比べれば、地球人類はまるで暗闇の中を手探りで出口を探している原始人のように感じられることでしょう。UFOは私たちのグリーンランドの基地を定期的に訪れていました。あるとき敷地内に小さな宇宙船が着陸したことがあり、そこから一人のスタートラベラーが出てきたんです。そして任務に就いていた若い空軍兵が、その方向にライフルを向けた瞬間、基地内のすべての武器がその機能を失ってしまいました。その後でその異星人は船内に戻って、宇宙船はあっと言う間に消え去りました」リーサは立ち上がって歩きながら話を続けました。
「それ以降、1ヶ月にわたって基地は全エリアで警戒態勢を敷きましたが、そんなことをしても何の役にも立たないことは誰もが分かっていました。もし相手が侵略や略奪をしにきた場合は、私たちには為す術もありません。こういった事実を隠蔽している側に身を置いていることに、やり切れなさを覚えてしまうときもあります」
「真実が知らされていれば、そのような出来事が数多く明るみに出ていたんでしょうね。似たような話を私は他の軍関係者たちから聞いたことがあります」私の言葉を受けてリーサが続けました。
「はい。でも私があなたに話したいのはそういう種類のものではないのです。あなたは偏見のない広い心の持ち主であると伯父さんから聞きました。そのとおりであればいいなと私は思っています」
「私はそういう人間だと思っています。あなたがこれから話そうとしていることは、私の伯父にも伝えてあるのですか?」
「ええ。それは私たちが二人ともかなり飲んでいて、どこにも行く場所がなかったある晩のことでした」
「彼はあなたの話を信じたのですか?」
「信じていなかったのなら、あなたをここへ来させたりはしていなかったでしょう」
「あなたから私に話があるとは、彼はまったく言っていませんでした」
「彼はこれまで一度も信頼を裏切ったことはありませんでした。彼は私があなたに話をすべきかどうかを、私自身に決めてほしかったんでしょう。そして私はそうすることに決めました。ひとつだけお願いがあります。私の話を途中でさえぎることなく、最後まで語らせてください」
「わかりました」私はそう答えてワイングラスを手にとって一口だけ飲みました。そしてリーサの口から出た最初の一言で心をすっかり魅了されてしまい、視線を広い湖の上に落としました。
「私はこの惑星で生まれた者ではないんです」彼女は語り始めました。
「誰もが私を北米インディアンだと思っていて、あらゆる書類に私もそのように記載してきましたが、真実は違うんです。私はあるインディアンの女性に孫娘として養育されたんです。私はあるとき地球に墜落した宇宙船に乗っていました。メアリー・ブレヴィンスという70代の女性が私を見つけました。墜落現場は彼女の家の近くだったのです。墜落の音を耳にした彼女は様子を見にやってきて、そこで私を見つけたんです。私が聞いたことをまとめて言えば、彼女は私の素性をみんなに隠して、自分の孫娘だと言って育ててきたんです」
そこでリーサは少し間をおきました。私は夕暮れの薄明かりの中で、彼女を間近で見つめました。彼女にはどこか、異世界のような超自然的な雰囲気が漂っていました。その面立ちは何か光を発しているようなきらめきを帯び、グレーの瞳はくっきりとした輪郭を描き、ショートスタイルの黒髪とオリーブ色の肌によっていっそう引き立てられていました。片側の頬の下に丸い傷跡が見えましたが、のちに彼女が語ってくれたことによれば、メアリーの庭園にあった収穫後のトウモロコシの茎の上に落ちた際にできたものだといいます。
「メアリーのことは周囲の誰もが知っていて、彼女が私を自分の孫娘だと言った際には、それが事実ではないことが分かっていても、疑問を投げかける者は一人もいませんでした。優れた呪術医として尊敬されていた彼女は、一族のなかで指導者的な立場にいたので、私の誕生にまつわることで雑音を立てる者は誰もいなかったんです。また彼女はその地域の助産婦も務めていたので、庁舎に出向いて出生証明書を発行してもらうことも簡単にできたんです。そうして私はリーサ・ブレヴィンスという名の人間になることができたんです」そこで口を休めたリーサは自分のワイングラスを手にとって、中身を飲むことなく、また下に置きました。
「私は自身がどうやってこの惑星にやってきたのか、またはどこにいたのかについての詳細はほとんど知りません。私が成長して娘になったころ、メアリーは私の出自について話してくれましたが、それ以外の情報はほとんど持っていませんでした。彼女は私を宇宙船の墜落現場まで連れていってくれましたが、そこは湿地帯となっていて、たびたび雨や逆流に見舞われていたため、彼女の言っていることの真実性を示す証拠が何もありませんでした。彼女によれば、私はまだ息のあった母親の腕に抱かれているところを発見されたそうで、その女性はメアリーに『この子をお願いします』と言って息絶えたといいます。その話が真実ではないと決め付ける理由が、私にはありませんでした。実際のところ、私は学校生活の中で、自分は他のクラスメートとは違っていることをいつも自覚していましたが、当時は具体的にどう違うのかがまだ分かっていなかったんです」
彼女はそこで話をとめて、ワイングラスを再び手にとって、少し口にふくみました。
「十代のころは、いつか自分の同胞たちが私を救い出しに来てくれることを夢見ていました。夜になるとよく外に出て星空の下に座って、彼らが姿を現すのを待っていましたが、やってくることは決してありませんでした。ときには自分は、地球で果たすべき特別な使命があるんだと思い込もうとしました。でももし本当にそうだとしても、私はまだそれを見出していないんです。やがて私は自分はこの地にずっと留まって、ここで最善の結果を出すべきなんだと気づきました」
「地球の人たちの中で、自分を浮いた存在にしてしまっている何かの特徴が、あなたにあるんでしょうか?」
「私は他の子供たちにどうしても馴染めなかったんですが、それは多くの子供たちが抱えている問題です。私が心を許せたのはメアリーだけでした。彼女は宇宙に対して特に理解の深い人でしたから」
彼女はひと呼吸おいて、グラスにワインを注ぎ足しました。
「私は身体的に異なっているんです。私にはおへそがありません」そう言ってブラウスをまくってみせた彼女の腹部のおへそがあるべき場所には、なめらかな肌があるだけでした。
「私はあまり睡眠を必要としません。1日に2時間から4時間ぐらいでしょう。子供のころからずっとそうなんです。祖母のメアリーによれば、私はよく夜中に目を覚まして、ベッドの上でひとりで遊んだりしゃべったりしていたそうです。ただ寝る必要がなかったんです。私の心臓の鼓動は緩やかで一般の人の半分の速さですが、それでも軍部には採用されました。私は地球人よりも老化の進み方も緩やかです。これらは小さな相違点ではありますが、ぜんぶが一つにまとまると私を身体的に異質な存在として際立たせてしまうんです。私は泣くことをしません。それは私がインディアンだからだろうと周りの人たちが言うのを実際に耳にしてきましたが、それとは関係ないんです。私は泣くことができないんです。そして思春期のホルモンの変化も何ひとつなかったので、それによって異性あるいは同性に惹かれることも一度も経験しませんでした。2歳のときに読み書きを覚え、5、6学年も飛び級をしたために、さらなる奇人として見られてしまいました。学校ではいつも年上の生徒たちと一緒にされていたので、何をするにも私は幼すぎました。ですから、あなた方とはちょっとした微妙な違いがあっても、私は人間として通用するんです。違っている部分は私が変人であるからという理由で済まされますから」彼女は口を休めて私にワインを注いでくれました。
「私が大学生のときにメアリーは亡くなりました。最初のうちは、これから自分の人生はどうなってしまうんだろうと途方に暮れました。彼女は私にとって頼りになる守護者であり、良き助言者であり、そして唯一の家族だったからです。そうして私は空軍に居場所を見つけました。そこの仲間たちは自分にとっての家族となり、私は退役するまでそこにいつづけたんです」
「あなたはまったく年齢を感じさせないですね。退役したと聞いて驚きました」私は思わずそう答えました。
「昔からの友人たちは誰もが引退し始めています。あなたの伯父さんのように。私はここアーカンソーよりもアラバマを選べば良かったと本当に思っています。少なくともそこには私のことを分かってくれる友がいますから。あなたの伯父さんは、自分も他の惑星からやってきたんだといつも言っていました」私はその言葉に吹き出してしまいました。
「彼は自宅にいるときもいつもそう言っているんです。自分は身内の者たちとはどうも種類が違うみたいだから、きっと他の惑星からふわりと地球に落っこちてきたんだって。それは一族の中で彼が浮いてしまっていることへのお決まりのジョークなんです」自分のグラスにワインを注ぎ足しているリーサを見ながら私はつづけました。
「今からこの家を売って、アラバマに引っ越しても遅くはないですよ。あなたが近くにやってくることは伯父も大歓迎でしょう」
リーサは私の提案に無言でいましたが、翌日に私をモンタナに見送る際に自分の引越しについて考えているのが私にははっきりと分かりました。
帰宅してから私はリーサに電話をかけて、長時間おしゃべりしました。それからしばらくは週に一度くらいの割合で連絡を取り合っていましたが、私の仕事のせいで時間の経過と共に電話の回数は徐々に減っていきました。 そのおよそ1年後3つの州のインディアン保留区を巡る3週間の旅から戻ってきたとき、留守番電話に伯父からの伝言が残っていました。リーサが落馬してしまい、病院の集中治要にいるとのことでした。1週間の休暇申請を済ませた私は、州都リトルロック行きの最も早い便に飛び乗り、空港からレンタカーで病院に向かいました。リーサの体は以前の彼女が身にまとっていたものでしたが、心はオザーク山脈で私と過ごした一夜の彼女よりもさらに鋭敏で快活になっていました。彼女の腰から下は麻痺してしまっていて、入院生活はとても長くなりそうな様子でした。
その後で伯父は、アラバマ州とアーカンソー州の間を何度も往復することになりました。寝ている間に静かに亡くなってしまったリーサを、アラバマ州の空軍病院へ飛行機で搬送する手続きをしていたのです。
リーサが亡くなった後、モーテルに滞在していた伯父と私のもとに、彼女の顧問弁護士が訪ねてきました。彼女が私の伯父を唯一の遺産相続人と定めていたらしいのです。弁護士はリーサの墓石に刻む碑文を伯父に決めてほしいと依頼し、彼は喜んで承諾しました。
いつかあなたがアーカンソー州のリトルロックとホープという町を結ぶ高速道路を通ることがあれば、その途中で『釣り人を魅了する湖沼百選』を売り物にする小さな町を目にするでしょう。そしてその町を抜ける道の左側に墓地が見えてくるはずです。そこには次のような碑文が彫られた墓石があるでしょう。
「メアリー・ブレヴィンスの孫娘、そして星の民の娘であるリーサ・ブレヴィンス。彼女はこの地球の者ではなかった」
・・・<抜粋終了>・・・・
1年のご愛顧、有難うございました。
良いお年をお迎え下さい。
(2018年12月31日)
|