そして私はまた植物の緑に引き戻される。
科学者たちは「植物とは何か」を考えなさい
今日(1月5日)、少し残念なニュースを目にしました。
それはアメリカの科学メディア PHYS.ORG で紹介された米イリノイ大学のゲノム研究所などがおこなったことに対しての以下の記事でした。
・Scientists engineer shortcut for photosynthetic glitch, boost crop growth by 40 percent
(科学者たちは植物の光合成の根源的な欠陥を克服する仕組みを作成し、農作物の成長を40%向上させた)
phys.org 2019/01/03
このタイトルに、
> 農作物の成長を40%向上させた
とあるように、「良いニュース」として伝わっています。
同時に、このタイトルに、
植物の光合成の根源的な欠陥
という文字があるのがおわかりでしょうか。
それを「克服した」とあります。
私はこのタイトルを見た時に、
「ああ、ついにそこに踏み込んでしまったか」
と思いまして、「この世の終わり」というものを本当に身近に感じてしまいました。
どうして、こんなようなことでそのようなことを思ったのかをうまくご説明できるのかどうかわからないのですが、この、
「植物の光合成の根源的な欠陥」という科学界にある概念
が最大の焦点だと思って、お読みいただければ幸いです。
これは実は、少なくとも私にとっては、「欠陥」ではなく、
「植物存在の最大の《慈愛のシンボル》」
なのです。
これと関係する概念としましては、もう4年近く前の記事となりますが、以下の二つの In Deep の記事まで遡る必要があります。
どちらも、私に、「植物とは何か」ということについて気づかせてくれた、個人的にとても重要な記事です。
2015年の In Deep のふたつの記事
・オランダの女性たちが発見した奇跡のエネルギー生成 : 生きた植物と生きた微生物と水のコラボレーションが生み出した驚異の発電法 - Plant-MFC
In Deep 2015年07月04日・植物が「緑色」であり続ける理由がわかった! そして人間の生活システムの完成は「植物との完全な共生」にあるのかもしれないことも
In Deep 2015年07月06日
いずれにしましても、このことを述べるには、まずは今回アメリカでおこなわれた実験と、その「根底にある思想」がどのようなものだったかをご紹介する必要があると思います。
科学メディア PHYS.ORG の本記事はかなり長いものですので、専門的な用語などの部分を除いて部分的にわかりやすくご紹介します。
こここからです。
科学者たちは植物の光合成の根源的な欠陥を克服する仕組みを作成し、農作物の成長を40%向上させた
Scientists engineer shortcut for photosynthetic glitch, boost crop growth by 40 percent
phys.org 2019/01/03植物は光合成によって太陽光をエネルギーに変換する。
しかし、地球上のほとんどの農作物は「光合成の根源的欠陥」を持っており、そのために育成が阻害されている。その欠陥といわれる過程は「光呼吸」と呼ばれる。
光合成は植物が光を用いて、二酸化炭素と水から糖と酸素が作られる。しかし、光合成の際に行われる光呼吸によって、糖と酸素を作るはずのエネルギーが多く消費され、それにより二酸化炭素が排出されてしまう。
米イリノイ大学とアメリカ農務省の農業研究サービスの科学者は、遺伝子組み換えにより、この光呼吸のプロセスをショートカット(遮断する)ことに成功した。そして、これにより、農作物が今より 40%生産生が高いものとなると発表した。
研究者たちは、予測されている人口増加に伴う食糧生産の増大への実質的な切り札となると期待している。
この画期的な研究は、ビル&メリンダ・ゲイツ財団と、食料農業研究財団の支援を受け、世界の食料生産性を持続的に向上させるために、より効率的に光合成させる技術として開発された。
ここまでです。
どこからどう読んでも、「良いニュース」にしか見えないかもしれません。
何しろ「植物の成長が 40%も促進される」のですから。
あるいは、今後、食糧難の時代の救世主のようにも見える話として取りあげられるかもしれません。
しかし、これはとても「絶望的なニュース」なのです。
「遺伝子組み換え」という部分に抵抗を感じる方はいらっしゃるかもしれないですが、問題はそういうところにあるのではありません。
どこが「絶望的」なのかといいますと、最初に書いておきますと、
科学者たちが「無駄」と述べる植物のこのプロセスは、植物が、地球と人間のために備え続けてきた最も美徳なプロセスであり、この研究はその美徳を奪ってしまうテクノロジーであるから。
なのです。
うまく説明できるかどうかわかりませんけれど、書いてみます。
植物が地球にいる意味
現代の科学上の認識では、先ほどの記事にあります「植物の光合成の無駄」は、
「植物の進化上の最大の欠陥」
だと思われています。もちろん、これはダーウィンの進化論の考え方の中でのものです。
進化論では「環境に適応したものや、優秀なもの強いものが生き残る」というようなことになっていますが、そういう中で発生した「植物の進化の欠陥だ」と。
しかし、まず考えるべきなのは、この光合成の「無駄」は、地球上で光合成を行うありとあらゆる植物が兼ね備えているもので、それは地域も何も関係ありません。
この
「植物すべてが持っている」
ということをまず前提として、その「植物の(ほぼ)全員が持っているメカニズムが生命の進化上の欠陥というのはおかしくないか?」と普通は思うはずですが、そうではなく、現行の科学では、「効率よくエネルギーをとれていないのはおかしい」というほうに考えが行くわけです。
合理的でないものはおかしいと。
生命の進化は、すべて合理的で「自分のために完璧にエネルギーを取り入れられるようでなければならない」と。
それ以外は「欠陥だ」と。
・・・ちなみに、このような思想の「根幹」には何があるかといいますと、
「生命というものは自分ひとりが生き残ればいいようできている」
という思想の存在があります。
まあ、今回の研究はアメリカ人によっておこなわれていて、アメリカ人の方々から見れば、「生き残ることがすべてと考えることの何が悪い」というようなことになるのかもしれないでしょうが、人間はそれでもいいかもしれない。
しかし、
「植物はそもそも、どうしてこの地球にいる?」
ということを考えてほしいのです。
ここで先ほどリンクしたふたつの記事を振り返ります。
まずひとつめの記事、
・オランダの女性たちが発見した奇跡のエネルギー生成 : 生きた植物と生きた微生物と水のコラボレーションが生み出した驚異の発電法 - Plant-MFC
は、オランダの企業「プラント - e 」社が、「植物による発電を実現した」という話です。
詳しいことは上のリンクを読んで下さってもいいですし、私の記事などより、短くわかりやすく説明してくださっていた TABI LABO さんの 2015年の記事をご紹介します。
オランダでは、植物から電力を生み出している!?まったく新しい自然エネルギーに注目
TABI LABO 2015/06/29
将来的には水田を発電所と呼ぶようになるのかもしれません。
オランダの企業「Plant-e」が開発したのは、植物を植えた湿地から電力を“収穫”する技術。
まさに、天然のソーラーパワーシステムとも言えるものです。植物から街灯やWi-Fiスポットの電気をまかなったり、スマホなどの電子機器を充電できるようにもなります。
このプロジェクトは「Starry Sky」とも呼ばれ、2014年の11月にアムステルダムで始まりました。すでに300以上のLED街灯に光を灯すことに成功しています。
光合成によって生成される有機物の中には、植物の成長を促す成分が含まれています。しかし、そのほとんどは使用されずに根っこから土へと排泄されてしまうのだとか。そのため、根っこの周りには、その有機物を食べようと自然と微生物が集まりますが、そこにヒントが隠されているようです。
微生物が有機物を消費する際には、電子が放出されているのだそう。そのため、そこに電極を設置することで電子を収集、電力を生み出す仕組みです。
このオランダのプラント-e 社は、女性たちにより起業された会社ですが、この会社は、先ほどの「植物の光合成の無駄」の部分の研究を続けていました。
その結果、
「植物は、光合成の際に、70%ほどを使わずに根から排出させていた」
ことを突き止めます。
70%です。70%。つまり、「大部分を自分のエネルギーにせずに、外に放出していた」ことがわかったのです。
そのような割合で、植物は自らのエネルギーにせずに「無駄」に(見えるようなかたちで)根から流しているのです。
何のために?
構造的な進化上の欠陥だから?
では、そのプラント-e 社が発表していた発電の概念図をご覧いただこうと思います。
オランダのプラント-e 社の「植物による発電」の概念
この図の下の部分を見て下さい。
植物の根の水の部分です。
「微生物」とあるのがおわかりだと思います。
そうなんです。植物が「無駄」と思われるように垂れ流している「エネルギー」は、微生物たちの栄養となっているのです。
これは、「世界中の植物がある現場すべてで起きていること」でもあります。
さて、この世を牛耳っているのは何でしょうか。
私は大晦日の記事、
・狂気じみていた2018年から、確定的なカオスの時代の2019年へ
In Deep 2018年12月31日
で、このように書いていました。
「私たちは、細菌にコントロールされている」
細菌というか、つまり「微生物」ということなのですけれど、人間はそういうように微生物に支配されている存在です。
そういえば、昨日発行させていただいたメルマガは、そのタイトルが、
「宇宙あるいは神はいかにして地球を人間の登場に適する環境を作り得たか」
という、やや物々しいものだったのですが、これは要するに、
・パンスペルミア説
のことと絡めて、
・人間も地球も同じような微生物に支配されている
こと。そして、
・その構図の頂点には「植物の存在」がある
というようなことを、あまりわかりやすくはなっていないのですが、そういうことを書かせていただいていました。
そのメルマガの中で私は以下のようなことを引用していました。
「地球の植物たちの祖先は、《地球を植物が支配するために》宇宙から飛んで来た。そして、植物は人間の登場を待ち続けた」
これは以下の記事からの引用です。
・私やあなたはなぜ地球にいられる? それは「4.5億年前の藻が植物として地球を支配するため」に上陸したから : 英国の専門機関により初めて解明された「植物はいかにして地球に誕生したか」
In Deep 2015年10月7日
なぜ植物は、地球に君臨したのか。
それは、先ほどのプラント-e 社の図だけで明らかだと思います。
「微生物というこの世の支配者を存続させるため」
に植物は地球に舞い降りたわけです。光合成で「 70パーセントものエネルギーの無駄を出す」ことで、それを成し遂げている。
つまりは、そのエネルギーの垂れ流しによって地球は成り立っている。
または、「支配者」などという変な言い回しをしなくとも、
「微生物という地球最大の生物群の環境を植物が維持している」
という言い方でいいと思います。
プラント-e 社のウェブサイトには、水ではなく、普通の大地での植物による概念図もありますが、それも基本的に同じです。
書くのを忘れていましたが、プラント-e 社の植物を使っての発電のメカニズムは、先ほどの In Deep の過去記事から抜粋しますと、以下のようになります。
プラント- e 社は、植物が光合成をする際に、その 70パーセントが使われていないことを発見した。
根を通って排出されるその廃棄物は C6H12O6 (グルコース)の化学構造を持っており、それが微生物によって分解され、二酸化炭素(CO 2)、プロトン(H+)と電子(e - )になる。
この自然のプロセスを利用して、プラント- e 社はこれを電気エネルギーに変換できたのだ。
この中に、
> それが微生物によって分解され、二酸化炭素、プロトンと電子になる。
とありますように、植物と微生物のコラボレーションが、結果として「発電」にまで行き着いたわけです。私は、この時に「これこそが科学だ」と非常に感動したのですが、今でもこれに関してはとても感動します。
そして、私は、このプラント- e 社の記事を書いている時に、ふと、
「植物が緑色である理由」
を翻然と理解できたのです。具体的にではないにしても、漠然と理解できたのです。
そして、その数日後に書かせていただいたのが、以下の記事でした。
・植物が「緑色」であり続ける理由がわかった! そして人間の生活システムの完成は「植物との完全な共生」にあるのかもしれないことも
In Deep 2015年07月06日
ご存じない方も多いかもしれないですが、実は、植物が「緑」であることは、進化論的な観点から考えると、科学上の大きな謎のひとつなのです。
なぜなら、
「光と水で生きている植物にとって、実は、緑色という色は最も効率が悪い」
からです。
このことは、たとえば、上の記事でも抜粋させていただいていますが、社団法人 日本技術士会 北陸本部のウェブサイトにあるコラム「彼らはなぜ「緑色」を選んだのだろうか・・・???」などにわかりやすく書かれています。
植物にお詳しい方のコラムで、その一部を抜粋します。
日本技術士会 北陸本部のコラムより
ほとんどの植物の菓っぱは緑色をしている。そんなことはあまりにも当たり前すぎて、以前はな〜んも気にならなかった。毎日空気を吸いながら、空気の存在そのものを忘れてしまっているように。
植物の葉が緑なのは、「葉が緑色の光を反射あるいは透過し、他の色の光を吸収している」という理由による。
つまり、葉は緑色の光をあまり必要としないということである。光のエネルギーを取り入れて糖を生産(光合成)するのに、緑色の波長領域のエネルギーを捨てた……ことを意味している。
ところが……である。(ここが重要!!)
地球に届く太陽光の強さと波長との関係を見ると、緑色の光に強さのピークがあるらしい。最強の緑色光を使えば、例え曇天の日でも光合成が可能となるんじゃないか? その方が明らかに効率的ではないか。
光のエネルギーを利用して光合成を行う植物が、最も強い光を吸収しないで捨てる。そういうメカニズムになっている植物たちって、一体なんでやねん!?!
なんでそんな非効率的で訳のわからん選択をするのだろう?
単に、神様の御戯れかな???
数億年も前に植物が誕生してから、ずっとずっと緑で来たのだろう。だから、緑であることが何か非常に重要な合理性を持っているはず。
植物たちと付き合いはじめてから35年もの時間が流れてしまいました。
その間、ほとんど毎日目にしている彼らが「緑色」であることに対し、ほとんど意識をしなかった。ところがある日、ふと気になり出すと多いに気になり、その疑問を捨てられなくなってしまう。
35年も見続けて来ながら、そんな基本的なことすら解っていなかったのだなあ〜と、かなり凹んでいます。彼らが緑である理由はいまだに解りませんが、自分の無知さ加減は身にしみて解りました。
ここまでです。
「植物は緑」なんてことは、「当たり前」だと私も思っていました。
しかし、この方のコラムを読んで以来、調べてみると、光合成つまり太陽の光で生きている植物という存在にとって、
「緑は最も効率の悪い色」
だということを知るにいたりました。
「緑と白以外ならどんな色でもいい」ほど、植物が緑であることは不合理なのです。
しかし、先ほどのプラント-e 社の発電のメカニズムの根幹の「そのエネルギーの大半を微生物たちに与えている」こと、すなわち、
「植物は 70パーセントものエネルギーを《他者のために使っている》」
ことを知った時に、植物の緑も同じなのかもしれないと。
植物は、人間が地球に登場する前から地球にいました。
その植物たちは何をし続けていたか。
それは、
「ひたすら他者に与え続けてきた」
のです。
人間と地球の支配者である微生物のために、そして、「いつか地球に登場する人間のため」に、植物は他者へ与え続けていたのです。
しかし、今回ご紹介した、ビルゲイツ財団の援助によっておこなわれた実験は、
「植物の持つ最大の慈愛を、彼らから奪った」
ことになります。
私が最初に「絶望的な気分になった」というように書いたのは、こういうことによるものです。
植物から与えられ続けていた私たち人間の科学と呼ばれるようなものは、その植物の最大の慈愛のプロセスを断ち切ることに向かい始めました。
この世の終わりは近いと感じます。
うまくご説明できていない部分もあり、あまりご理解いただけない部分もあったと思いますが、「人間を取り囲む地球と宇宙のメカニズム」というものを、今一度冷静に、「科学的に」考えていただきたいと思う次第です。