2019年2月14日の報道より
最近、「国家がインターネットを支配しようとする」という話題や報道が結構多いのですが、先日、冒頭のような記事がありました。
それは、
「ロシア政府が、世界のインターネット網からの切断を行う」
ための準備を進めていることが報じられていました。
最初は実験としておこなわれるようなのですが、そういう流れが主要国にもやって来るかなあというように思います。
まずは、その記事を最初にご紹介させていただきます。
Russia Is Preparing to Disconnect The Entire Country From The Internet
sciencealert.com 2019/02/14
ロシアが国全体を世界のインターネット網から切断する準備をしている
技術的自立性のためのセンセーショナルな試みとして、ロシア政府は、インターネットを世界の他国から遮断するという計画を立てている。
ロシアのインターネットユーザーは 1億人以上にのぼるが、そのロシアの人たちに影響を与える巨大な「切断」実験となる。
ロシアはこの数年、このことについて語り続けており、それによれば、実験の理由は、孤立したロシアのインターネットが、海外のサーバーからロシア国内のインターネット網を強制的に切断するようなサイバー攻撃が発生した際に、「国内のインターネットをオフラインにできるかどうか」を確認するための一時的なテストだという。
ウラジミール・プーチン大統領の元インターネット顧問であるジャーマン・クリメンコ(German Klimenko)氏は、「ロシアの領土にあるべき重要インフラの保護について大統領と話している」と 2016年に述べたことが米ワシントンポストに掲載された。
クリメンコ氏は以下のように述べていた。
「ロシアと西側との関係においては、『構造的変化』を起こす可能性が高いと思われます。したがって、私たちの仕事は、そのようなシナリオからロシア国内を保護するために、ロシア国内のインターネット分野を調整するのです」
このような考え方は現在、ロシアで法律化されつつある。2018年12月にロシアで導入された法案の草案は、先週、ロシアの国会議員たちから暫定的な承認を得た。
その立法案では、ロシア国内のインターネットプロバイダは、海外からのサイバー攻撃者からの潜在的な脅威に対抗するために、自社のネットワークで技術的対策を講じなければならなくなる。
同時に、ロシア国内の通信を担当するロシアの政府機関「ロシア連邦通信局」は、インターネット上で禁止されているメディアを管理し、検閲する新しい権限を取得した。
これは現在、ロシアのインターネットプロバイダによって個別に行われている。
このインターネットに関しての新しい政策の背後には、昨年 9月に明らかにされた、アメリカ政府の新しいサイバーセキュリティ戦略の攻撃性に反応して起きていると関係者は述べる。
ロシア情報技術委員会のレオニード・レヴィン(Leonid Levin)氏は、「西側諸国が、ロシアへの圧力を増大させるという呼びかけを行っており、私たちは、サイバースペースでロシアの主権を守るための追加の方法を検討することを余儀なくされた」と述べている。
その上で、
「ロシアがワールド・ワイド・ウェブ(世界中につながるインターネット網)への接続を切断することは、国際的な緊張が高まる中で起こりうるシナリオの 1つだ」
とも述べている。
しかし、ロシアの誰もがその計画に参加・賛同しているわけではない。
人権とインターネットの自由を擁護する人々は、このインターネットの遮断という行動は、中国が実施している巨大ファイアウォール(中国国内に通過させてはいけない通信を阻止するシステム)と似た別の技術的なディストピアが生み出される懸念があると主張している。
ロシアの起業家の連合さえも、極端な対策はロシアのインターネット機能への脅威であると考えている。
ロシアのインターネット専門家、フィリップ・クリン(Filipp Kulin)氏は、以下のように英国 BBC に語った。
「世界規模のインターネット網からロシアが切り離されるということは、私たちロシアは、すでに他の国々と戦争をしているということを意味するでしょう」
そして、以下のように述べた。
「このような状況下では、私たちはインターネットのことを考えるのではなく、核の冬のために、ジャガイモを育てる方法を考えるほうがいいのかもしれません」
このような多くの懸念の声があるにも関わらず、この「インターネット切断計画」は、すぐに法律が制定されると予測される。
ロシアのインターネットの切断という大きな試みが、いつ起きるかはわからないが、かなり差し迫ったものとなっているはずだ。
正確な日付は設定されていないが、ロシアの計画案では、巨大な切断の試みというその事象は、今年の 4月1日より前に発生すると思われる。
ここまでです。
最後の1行には驚きました。なにしろ、巨大な影響が考えられるそんな試みが「 4月1日より前に発生する」可能性があるというのです。
まあ、一般的に考えれば、ロシアが世界のインターネット網から切り離されるとしても、最も影響を受けるのは、ロシア国内のインターネットユーザーであり、他の国の人は、そういうことがおこなわれていることも知らないままだと思います。
しかし、私なんかの場合は、ニュースソースがロシアのものであることが大変に多いのですね。
ロシア語が出来るわけではないですが、ロシア語は、文法的には英語などとさほど変わらないですので、Google翻訳などで、英語にして読むことができます。
ロシアのメディアや SNS を見始めてから、つくづく思うのは、なんというかこう……ロシアの人たちの感覚っていうのは独特なのですよね。
美的感覚も(みんなじゃないでしょうけれど)非常に独特で、素晴らしいものなんです。
この In Deep のブログをパソコンで見ますと、右側に「今日の黙示録的な一枚」という写真のコーナーがあります(スマートフォンでは下のほうにあります)。
そこで紹介させていただいている写真は、7割くらいがロシアの SNS からのものではないかと思います。
たとえば、今、そのロシアの SNS を見てみましても、下のような美しくも奇妙な雲の写真などが非常に早い情報として載せられていたりします。
ロシアのSNSに投稿されといた2月13日のクロアチアの雲
同SNS上の2月13日のスイスで撮影された彩雲
このような印象的な写真が、毎日数多く、世界中から集められて投稿されています。
こんなに「美しいものが多く」「非常に印象的で」「そして情報が早い」というようなウェブサイトは、それはまあ、他の国にもたくさんあるのだとは思いますけれど、私自身は、ロシアのいくつかのウェブサイトや SNS 以外では知らないです。
そしてまた、こういう写真の数々は、ロシアの人たちが、世界中の SNS や報道などから集めてきているもののわけでもありまして、ロシアがインターネットから切断されれば、ロシアの人たちは、他国のウェブサイトに接続することができなくなりますし、私たちもロシアのウェブサイトにはアクセスできなくなるのでしょうね。
今回の「実験」が、1日とか 2日とかの短期間で終わるものなのか、そういうものではないのかはわからないですが、こんなこともする時代なんだなあと。
そういえば、インターネットの「支配」について、最近とても驚いたのは「韓国で多数のアダルトサイトがいっせいに遮断された」という報道でした。
以下は、2月12日の韓国中央日報の記事からの抜粋です。
韓国政府、アダルトサイトを11日から遮断…「独裁時代か」の声も
中央日報 2019/02/12
アダルトサイトなど政府が不法と規定した有害サイトへの接続が11日から全面的に遮断された。
IT業界によると、韓国国内インターネットサービス事業者は当局の要請を受け、11日から「サーバーネームインディケーション(SNI)フィールド遮断方式」を利用したウェブサイト遮断を始めた。この遮断方式は以前より強力なウェブサイト遮断技術。
審議当局の関係者は「11日の一日の間に約800件のウェブサイトがSNIフィールド遮断方式で接続が遮断された」と伝えた。
サイトが全面的に遮断されると、一部からは表現の自由の委縮や盗聴、検閲問題が指摘された。
またインターネットサービス事業者の顧客センターやSNSなどでは特定サイトに突然接続できなくなった理由について使用者の問い合わせが集中した。
主要国で、これをやったのは見たことがないです。
この場合は、「アダルトサイト」という前提があるので、あまり世間一般からは、反論や反対が出にくいかもしれないのですが、記事に、
> 政府が不法と規定した有害サイト
とありますが、このような
「大義名分」
は、「国家のため」という理由付けができるのなら、どんなものに対しても機能するものだと思われます。
「政府が不法と規定する」ことに基準があるわけではないでしょうし、たとえば、「特定の国のウェブサイトを韓国国内で遮断する」とかも、大義名分がつけば、何でもできるはずです。
これが今の韓国の政権の共通意志なのか、大統領単独の意志なのかはわからないですけれど、韓国は、想像以上の「社会主義的独裁国家」を目指しているのだなあと思わざるを得ません。
ロシアの試みも含めて、こういうような試みは、最終的には、以下の報道のようにまで発展していくことだってあるわけです。
今年 1月の報道です。
コンゴ政府、全土でネット遮断=大統領選後の騒乱阻止と説明
時事通信 2019/01/02
コンゴ政府は1日、全土でインターネットを遮断したことを明らかにした。
12月30日投票の大統領選をめぐり不穏な空気が漂っており「大衆の騒乱」を阻止するためだと説明した。
野党は12月31日からネットがつながらないと政府を批判。欧米各国も早急な復旧をコンゴ政府に求めていた。
大統領選は、カビラ大統領の後継候補と野党の有力2候補の計3人が独自の集計に基づき自身の優勢をそれぞれ主張している。
コンゴ政府高官は1日、「うその集計結果を大衆に吹き込む者がいて、これが騒乱の元になる」と強調。ネット遮断は政府の「責務だ」と訴えた。
インターネットで何か都合の悪い情報が強く流れるようなら、「全部遮断すればいい」というようなことを考えることが、他にも出てくるのかもしれません。
結局、ある程度の多くの国は、現在の中国のように、インターネットを国家が支配するという方向に進みたいのですかね。
「世界をつなぐインターネット」という夢のような概念まツールが、私たち一般人でも気楽に使えるようになって、大体 20年になります。私が初めてインターネットに接続したのも、その頃でした。
その夢の概念の世界も、さまざまな国や地域で進行している「ディストピア化計画」の中で、次第に消えていくものなのかもしれないですね。
いずれにしても、先日の以下の記事などを含めまして、今年は特にロシアの動きが重大なものとなるのかもしれませんね、
なお、2月15日に最新のメルマガを出させていただきました。タイトルは「良心、瞑想、サイキック能力は世界を良いほうに変えられるだろうか?」というものです。ご興味のある方はよろしくお願いいたします。