5月12日の米フォーブスより
・forbes.com
2030年を待たずに地球はミニ氷河期に突入したかもしれない
「地球はミニ氷河期に近づいている」ということを初めて知り、それを記事にしたのは、過去記事を遡って見ますと 2011年のことだったようです。
以下の記事は、2011年11月に NASA の太陽物理学者が「今後の太陽活動と地球の気温」について述べた内容を 5回にわたって記したものです。
・あらかじめ予測されていた小氷河期の到来 (In Deep 2011/11/07)
それまで「太陽活動と地球の気温」に関係があるなどということ自体を知らなかったのですが、間接的にも直接的にも、太陽活動は非常に地球の気温に干渉していることを少しずつ知ることになりました。
その後、「宇宙線」というような存在も知りました。
この宇宙線は、地球の「雲」を生成しているのですが、この宇宙線の量をコントロールしているのも太陽活動であることも知りました。
たとえば、以下は、約 20年間の「宇宙線の量と、地球の雲の量」の関係です。
赤いラインが宇宙線、青いラインが雲の量で、ほとんど完ぺきな相関を示していることがおわかりかと思います。
宇宙線量と地球の雲の量には完全な相関があり、宇宙線が増加すると、地球の雲が増えるのです。
あくまで一般的ですが、地球の雲が増加すれば、雨の日が増えることになり、同時に気温も低下傾向になるということは言えると思われます。
つまり、
「宇宙線が増加すると地球は低温傾向となり、全体として雨が増える」
ことになります。
これに関しましては、この数年の「豪雨と洪水ばかりの世界」を見ていても、ある程度ご理解いただけることだと思います。
雨が増えているのです。
それで、この宇宙線というのは「太陽の磁力に進行を遮られる」ものですので、つまり地球に到達する宇宙線は、
「太陽活動が強い(磁気が強い)と減少する」
ということになり、逆に、
「太陽活動が弱い(磁気が弱い)と宇宙線は増加する」
ということになるのです。
今現在の太陽活動はどのような状態かといいますと、冒頭の米フォーブスの記事に「太陽は深い眠りについた」とありますように、
「太陽活動は、記録にないほど弱い」
のです。
これは昨年あたりから NASA などによって予測されていたことでもあり、以下の記事などで取りあげましたが、今後の太陽活動は「過去 200年間で最も弱いものとなる」ことが確実となっていました。
2019年にNASAが予測した2020年以降の太陽活動
・NASA
さらにいえば、アメリカ政府や NASA などは、それよりかなり以前から「太陽活動がきわめて弱くなっていく」ことを予測していたようです。
というのも、2013年に、全米研究評議会の「地球の気候変動に太陽変動が及ぼす影響」という報告書にそのことが書かれてありました。
NASA が太陽活動が記録的に弱くなるという予測を発表したのは 2019年でしたが、実際にはそれ以前から研究されていたようです。
2013年の全米研究評議会報告書「地球の気候変動に太陽変動が及ぼす影響」より
現在(2013年)進行している太陽のサイクル 24の太陽活動は、過去 50年以上で最も弱い。
さらに、議論の余地はあるとはいえ、太陽黒点の磁場強度の長期的な弱化傾向の証拠が存在している。
アメリカ国立太陽天文台では、次の太陽サイクル 25が到着するまで太陽の磁場は非常に弱く、太陽黒点が形成されることはほとんどないだろうと予測している。
(NASA)
そして、現在、まさにその通りの状況となっているのですが、ただ、「予測を上回るほど太陽活動が弱くなりつつある」ということにもなっているようなのです。
スペースウェザーに残されている過去 15年間ほどの記録では、この期間で最も太陽活動が弱かった(太陽表面に出現する黒点が少なかった)のは 2008年で、この年には、
「 1年間のうちで、太陽黒点の出現しない日が 73%(268日)を占めた」
のですが、今年 2020年は、5月16日までの時点で、太陽黒点が出現しない日が、105日に上っており、率として、
「 2020年は、太陽黒点の出現しない日が 77%に上っている」
のです。
今後の状況で変化するかもしれないですが、今後さらに太陽活動は弱くなっていくと推測されていますので、そのような状態で進行しますと、今年 2020年は「近年で最も太陽活動が弱い」ことが確定的になる可能性があります。
上の NASA の表に「ダルトン極小期」という文字がありますが、これは、やはり、太陽活動が非常に弱かった時期(西暦 1790年から 1830年の約 40年間)でして、そして、この時にも地球は全体として寒冷化に包まれていました。
地球の過去の歴史においては、「おおむね、太陽活動が弱かった期間は、ミニ氷河期の時期と一致している」という歴史的な事実があります。
そのようなことで、先ほどの 2011年の記事を記して以来、「 2030年頃までに、地球はミニ氷河期に入るのではないか」というように考えるようになっていました。
しかし、NASA の科学者たちの数日前の発表などを見ますと、どうやら、予測より早くミニ氷河期がやってきたのかもしれません。
なお、私が、ミニ氷河期の到来を意識するようになった 2011年以降、地球の気温は下がるのではなく、上昇し続けていましたが、ところが、
「 2016年から、地球全体の気温は、寒冷化に方向を変えた」
のです。
それは以下の記事などで記しています。
この時点でも「地球温暖化」という言葉を用いるメディアが多かったですが、地球の気温を調べる上で最も信頼性の高いデータである NASA ゴダード宇宙科学研究所の気温のデータでは、
「2016年 - 2018年の間に、地球の気温はかつてないほど急激に低下していた」
ことが示されていたのです。
以下は、アメリカの金融系サイトの 2018年4月24日の記事からの抜粋です。
この2年間で過去最大の地球寒冷化が発生していたことをご存じだろうか?
2016年から 2018年のこの 2年間のあいだに、過去最大となる地球規模の寒冷化が起きていたと書くと、驚かれる方もいらっしゃるのではないだろうか。
しかし、世界の平均気温について、ほとんどのジャーナリズム報告で使用されている標準的な情報源である NASA ゴダード宇宙科学研究所による GISS 地球表面温度分析(GISS Surface Temperature Analysis)は、このことを正確に示している。
2016年2月- 2018年2月の 2年間で、世界の平均気温は 0.56℃低下した。
これは、それまで過去最大の平均気温の低下を見せた 1982年- 1984年の 2年間の気温の低下 0.47°Cを上回る数字であり、観測史上最大の地球規模の気温の低下となる。
2016年から 2018年のこの「大寒冷化」は、2つの小さな寒冷化に主導された。
ひとつは、2016年2月- 6月と、もうひとつは 2017年2月 - 6月/の期間だ。
そして、仮に 2018年2月から 6月までも同様の事象が起きた場合、地球の平均気温は、1980年代よりも低くなる。
(Real Clear Makets)
これは金融系のサイトですが、「気温」というのは、たとえば小麦やトウモロコシなどの農作物の先物取り引きというようなものが存在しているように、気温と気象は金融に対しても大きなインパクトを与えます。
ですので、実は、この世の中では、金融や経済の専門家たちが最も真剣に気温の変動と、自然災害の行方を研究していると言えなくもないのです。
金融や経済の専門家の方々は、表面的な一般論ではなく、「現象の真実」を知りたいわけです。
たとえば、「太陽の地球への影響」に研究に関しての最大の著作のひとつに、『太陽活動と景気』という名著があります(私自身、この本でどれだけ太陽のことを知ったかわからないほどです)。
しかし、この本を書かれた嶋中雄二さんという方は、科学者でも天文学者でもなく、三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券参与である、つまりエコノミストなのです。
そのようなエコノミストの方が書かれたこの本は、「太陽と地球の関係」を、夥しい量のデータで説明しようと努力されていまして、どんな太陽科学者にもできなかった壮絶な太陽の現実を私たちに示してくれています。
太陽に興味のある方でなくても、『太陽活動と景気』はぜひ読まれてほしい著作のひとつです。
このような本が日本に登場したというのは、一種の奇跡です。
それはともかく、先ほど「太陽活動が弱いと、地球の気温が低下する傾向がある」というように書きまして、そこに宇宙線の影響を書きましたが、当然、
「太陽放射の直接の影響」
もあります。
これについては、「太陽が暗くなってきている」という 2017年の記事で、スペースウェザーの記事を取り上げたことがあります。
そこから抜粋しますと、太陽活動が「ほんの少し弱くなるだけ」で、地球へのエネルギーの影響が非常に大きくなることが示されています。
太陽が薄暗くなってきている
現在、太陽は黒点が少なくなり、その 11年の活動周期の最小期に近づいており、それにつれて NASA の衛星は、太陽からの全放射照度の低下を示している。
そして現在、太陽からのすべての電磁スペクトル(波長)において、その出力は、2012年から 2014年までの太陽活動最大期と比較して、0.1%近く低下した。
0.1%の変化と書くと、それほどの変化に聞こえないかもしれないが、太陽は、地球表面に 1平方メートルあたり約 1,361ワットのエネルギーを蓄える。
ここから地球全体へのエネルギー供給を合計すると、太陽からの放射照度の 0.1%の変動は、地球の他の自然エネルギー源をすべて合わせたものを超えるのだ。
この他のエネルギー源には、地球中心部からの自然放射線も含まれている。
(Spaceweather)
このように、
> 太陽からの放射照度の 0.1%の変動は、地球の他の自然エネルギー源をすべて合わせたものを超える
というような影響があるのです。
これは 2017年のデータの時点のもので、それ以降、太陽活動はさらに弱くなっていますので、これ以上の影響を地球は受けているはずです。
そして、最近になって、NASA の科学者たちが、
「地球は、予想以上の長期間の日照不足の時代に突入する可能性がある」
と述べていたことが報じられていました。
もちろん今すぐどうなるということではないですけれど、現実として、昨年の日本などもそうでしたけれど、雨の状態が年々ひどくなってきていたり、天候不順が長引いたり、あるいは「気温が不安定になってきている」といったことは今では普通となってきていますが、その気温と気象の不安定さが、さらに進行する可能性があるのです。
そして、現在は以下の記事などにありますように、多くの国でロックダウンなどの影響により、農業にも影響が出ています。
輸送の停止やレストランの閉鎖などにより、作物の出荷が停止あるいは停滞していることによる農家の疲弊もあり、現在、食糧事情全体については、決して「良い状態とはいえない」ところにあります。
それに加えて、深刻な気温や気象の不安定さが訪れた場合、なかなか厳しい状況が訪れる可能性があると共に、過去の「ミニ氷河期」は、数十年単位で続いていまして、影響は決して一時的なものではない可能性もあるのです(短期的な食糧の備蓄などは意味をなさない可能性があるということでもあります)。
日本を含むアジアなどではあまり感じられていませんが、アメリカやヨーロッパなどでは、この 5月になって、以下の記事にありますような過去にないような低温に見舞われている場所が増えています。
・アメリカ北東部にロックダウンと共に氷河期が到来。 数百年に1度クラスの寒さにより、農作物への懸念が
科学者たちの予想通りに、実際にミニ氷河期に突入していくかどうかはともかくとしても、気温と気象の不安定さはすでに現実化しています。
その NASA の科学者たちの発表を報じていた記事をご紹介して締めさせていただきます。
低い太陽活動が気温の急激な低下の原因になると科学者たちは言う
Low Solar Activity to Cause Temperatures to Plummet, Say Scientists
Summit News 2020/05/14
専門家によると、現在、太陽は「太陽活動の極小期」に入っており、これにより、地球の気温が過去 20年間と比較して最大 2℃下がる可能性があるという。 これが地球規模の飢饉を引き起こすことが懸念されている。
太陽活動は深刻な衰退期に突入しており、科学者たちは 5月14日の時点で、太陽が黒点をまったく示さない日がすでに 100日を超えたと述べている。
NASA の科学者は、この弱い太陽活動は、地球が新たな「ダルトン極小期」を経験する可能性があることを意味すると述べる。 ダルトン極小期とは、1790年から 1830年のあいだの太陽活動の長い極小期であり、この時期、地球は長時間の深刻な寒冷化を経験し、また大規模な火山噴火が連続して発生したときでもある。
英国デイリースターは、NASA の科学者たちの発言から、「地球は現在、日照不況の最深期の 1つに突入した可能性があり、今後長期間にわたる寒冷化と、それに起因する食糧問題や飢饉、その他の問題を引き起こす可能性があることを意味する」と報告している。
太陽は現在、2年連続で、記録的な低い太陽活動を示し続けており、2019年には全体の 77%の日で太陽黒点が観測されなかった。 今年も黒点の出現しない日が 77%に達しており、今後の状況次第では、この記録的な数値を超える可能性がある。
太陽は、地球の気候に対して最も影響のある原動力であり、いわゆる人工の気候変動の影響とは比較にならないほどの大きな影響力を持っている。