1ヶ月ほど前に、日本海を中心とした日本の沿岸に、リュウグウノツカイがあまりにも数多く打ち上げられていることについて、以下の記事で取りあげたことがありました。
この記事のタイトルには、「日本海の変」などとつけさせていただいているのですが、その後も日本海は、どうも変でありまして、特にそれを洞察するという気があるわけではないのですが、その後の「日本周辺の海で起きていること」ということを、記録として残しておきたいと思います。
まず、漁業の関係の3つの報道をご紹介します。
ハリセンボン」が大量発生 10万匹以上? 漁師困惑
山陰中央テレビ 2019/02/28
島根県の出雲市沖にハリセンボンが大量発生。
28日朝、出雲市沖の日本海で撮影された写真には、漁船を埋め尽くす、おびただしい数のハリセンボンが写っている。
撮影した漁師によると、10万匹以上はいたという。
また、同じ海域で27日に撮影された写真にも、同様の様子が写っていた。
1週間ほど前から、毎日のように大量のハリセンボンが定置網にかかるようになったという。
地元漁師・南木篤史さん 「最悪のものが来たなという感じですね。着いた時にもう下から湧いてきてた。やばいという話をしていて、魚をとる段階になると膨れあがって浮いてくるので最悪」
このため、本来とりたいアジなどの魚が、まったくとれなくなっている。
定置網漁師・南木貴史さん 「自分も7年漁師やってきて初めてだったので、どうしていいものなのか。出荷できるものなのかどうかわからない状態」
専門家によると、数年に一度、このように大量に定置網にかかることが報告されているとしているが、漁師たちは、ハリセンボンが売り物にならないため、すべて沖に逃がすしかなく、有効な解決策も見つからないため、頭を悩ませている。
もうひとつは、ホタルイカのニュースです。
わずか1.5キロの記録的不漁 ホタルイカ解禁日に…
ANN 2019/03/01
富山湾に春の訪れを告げるホタルイカ漁が1日に解禁されましたが、滑川漁港で捕れたのはわずか1.5キロと記録的な不漁になりました。
富山県の滑川漁港では去年、ホタルイカ漁の初日の水揚げ量は6キロで過去10年で最も少なく、記録的な不漁といわれました。
今年のホタルイカ漁解禁の午前4時に6隻の船が出港しましたが、定置網に掛かっていたのはスルメイカばかりでした。
結果として去年をさらに下回り、1箱に満たないわずか1.5キロしか捕れなかったということです。
滑川春網定置漁業組合・副組合長:「こういう不漁、少なかったから、やっぱり先のことを考えたら心配です。こればっかりは自然相手だからなんともいえんけど…」
ホタルイカ漁は6月ごろまで続きます。
そして、対馬の海域の話です。
これは警鐘!?対馬の海で次々と起こっている異変
日本財団「海と日本プロジェクトinながさき」 2019/02/13
長崎県の対馬市沖の海で異変が起きているという。その異変とは、サンゴの白化現象や獲れる魚の変化など、海の生態系が変わってしまったこと。
白化現象とは、サンゴ礁が白くなり、死滅する恐れが高くなる現象。
長崎県の対馬市沖には、世界で最も北にあるサンゴ礁が見られるが、白化現象が2016年12月に初めて確認された。その原因は、海水温の上昇と考えられている。
国立環境研究所によると、2016年の7月と8月は、平年より平均気温が1〜2℃高く、30℃を超える日が続いた。そのため、これらの異変が起きたのではないかと言われているが、詳細な原因は不明だという。
漁業関係者は、この変化をひしひしと感じている。「まず、イカがいなくなりましたね。クロマグロの稚魚が多いので、イカを全てエサにしてしまっているんです」と、漁協関係者が語るように、獲れる魚が変わってきているのだ。
海水温の上昇から白化現象などが起こり、サンゴが減ってしまうと、海の生態系を変えてしまうと言われ、最終的には生息する魚の種類も変わってしまう。そのため、今まで漁業で獲れていた魚の種類が違うものになってしまう危険性があると考えられている。
しかし、国立環境研究所によると、対馬の場合は、サンゴ礁の規模が小さく、白化現象による生態系への影響は大きくはないという。ただ、対馬市の漁業関係者は、クロマグロが出現したため、不安を感じている。その上、クロマグロには漁獲規制があり、対馬の漁業関係者は増え過ぎたクロマグロを獲ることもできず、対応に苦しんでいる。
このような報道が最近相次いでいるのですけれど、報道にありますこの3つの位置を地図に示してみますと、以下のようになります。
やはり、「日本海」ということになっています。
その中の、ホタルイカがまったく獲れないという富山湾は、先ほどリンクいたしました、「異様な数のリュウグウノツカイが漂着している」場所でもあります。
とはいっても、こういうことが起きているからといって、「では、日本海で何が起きているのか」ということについて、わかるわけでもないですけれど、ただ、思い出しますのが、
「そういえば、2018年の1月に史上最悪規模と言われた原油流出があったなあ」
ということでもあります。
それは、以下の記事でふれたことがあります。
その際、英国海洋センターという機関が発表した「原油流出のシミュレーション」では、原油流出3ヶ月後(2018年4月頃)の原油の拡散状況は、以下のようになるとしていました。
英国海洋センターによる2018年4月の原油の拡大状況
先ほどリンクしました過去記事にも書きましたけれど、過去の大規模な原油流出事故の場合、影響は「数年後から顕著に出てくる」という研究もありました。
たとえば、2010年にアメリカのメキシコ湾で、石油採掘リグの事故による大規模な原油の流出があった後は、直後ではなく、
「 7年後にメキシコ湾のデッドゾーンが最大になった」
ということを以下の記事でご紹介したことがありました。
このデッドゾーンの拡大が原油流出事故が原因かどうかは断定できるものではないですけれど、事故の以前は、そんなにデッドゾーンが広がっていなかったことを考えると、程度はともかく、ある程度は関係があるとは思います。
デッドゾーンというのは、海で「生き物が生きられない海域」のことを言いますが、今はそれが世界中に広がっていまして、たとえば日本の海域でも、以下のようにデッドゾーンが広がっています。赤い部分がデッドゾーンです。
科学誌「サイエンス」に掲載された論文からのものです。
2018年1月5日のサイエンスに掲載された論文より日本周辺のデッドゾーン
・Declining oxygen in the global ocean and coastal waters
これは「原油流出の前」の調査によるものですので、2018年1月の原油流出によって、さらに、日本周辺のデッドゾーンが拡大していることは、おそらく間違いないと思われます。
もちろん、これらのことと最近の日本海の異変に関係があるということではないかもしれないですが、ただ、このようなデッドゾーンの拡大にしても、今、日本の周辺の海は、
「すでに正常な状態とは言い難い」
ということになっていることは事実です。
豊かな海産資源は、日本のような海に囲まれている国の宝でもありますけれど、その海が死んでしまえば、宝も消えてしまうという道理の中で、現在はなかなか危ういところにあるのかもしれません。
もちろん、これは世界中の海の多くに言えることでもありまして、それに加えて、この数年は、海水温度が世界中で異様に高くなっていまして、海水温度の不安定化も、海の生き物たちには良くないことであり、どうも、「海産資源の急減」という未来が、わりと現実化しようとしている現在なのではないかと思ったりします。
今の私たちは、好きなように食べて飲んで、そういうものが「果てることはない」という錯覚の中にいる部分もないではないですが、そういう概念も通じない時が来るのは、ものすごく先ということでもないのかもしれません。
先ほど取りあげさせていただいたような「漁獲の異常」のニュースは、これからもどんどん増えていくような気がします。